3.2.6.プログラム2
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上演:明治45年(1912) 6月1日 京都・南座
外題:夕ぎり伊左衛門
資料番号:arcBP02-0001-003 所蔵:立命館ARC本作は、明治45年(1912)に京都・南座で上演された歌舞伎のプログラムで、「夕ぎり伊左衛門」のページである。実際に誌面を見てみると、役者名や役柄が記されている点では、従来の役割番付の性格を引き継いでいる。一方で、挿絵や文章解説が冊子内に整理して組み込まれており、単に配役を知らせるだけでなく、観客が演目内容を読み、理解するための読み物としての性格も備えている。
従来の番付では、役者名や外題を大きく見せ、興行情報を視覚的に伝える構成が中心であった。それに対して本作では、上演情報がページごとに整理され、現在の公演パンフレットに近い近代的な誌面構成へと変化している。これは、近代以降に西洋演劇や音楽会などを通じて流入した「プログラム」文化の影響を受けたものと考えられる。
しかし興味深いのは、歌舞伎界では西洋式プログラムへ完全に置き換わることはなかった点である。近代化が進み、冊子には写真・広告・詳細な解説などが加わっていく一方で、「番付」「筋書」といった江戸以来の名称や文化的感覚は保持され続けた。現在の歌舞伎で販売されるプログラムも、その実態は西洋式プログラムやパンフレットに近いが、名称や形式意識には江戸歌舞伎以来の伝統が色濃く残されている。
つまり、近代の歌舞伎観劇メディアは、西洋由来の「プログラム」文化を受け入れながらも、江戸以来の番付文化を重層的に継承することで成立していたのである。(宮﨑・戸塚)
