2017年8月17日から9月前半までの予定で、亀岡市・篠窯跡群の分布調査で採集した須恵器の実測、および、京都市・五条坂京焼登り窯で発掘した出土品の実測作業を行っています。実測をしてくれている学生・院生の腕前が徐々に向上しています。デジタル化を促進し活用している本研究ですが、考古学の世界では手作業による「実測」という作業がまだまだ欠かせません。遺物を詳細に観察して記録する作業は、遺物と対話する、大変貴重な時間です。

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篠窯跡群採集須恵器(「西前山3号地点」2017年4月新発見)

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須恵器実測の様子

篠窯跡群は1999年から毎年継続して分布調査を行ってきましたが、今年4月に袋谷地区周辺を踏査し、ほぼ全域を踏査し終わりました。現在は昨年度踏査した黒岩地区の遺物を中心に実測作業を行っています。10世紀代の窯跡が多く、緑釉陶器の素地が数多く含まれています。緑釉陶器の高台はロクロ回転を利用して削り出して成形しますが、その削りだし方法を詳細に観察できる資料に恵まれています。この緑釉陶器類は、平安京を初めとして全国各地に供給された可能性がありますから、窯跡採集の基礎資料として重要な資料になると思います。

五条坂京焼登り窯(旧藤平)は、明治末頃に京都陶磁器合資会社によって作られ、昭和18年から藤平窯業が使用した京式登り窯です。現存する京式登り窯としては最大規模を測ります。2016年8月に発掘調査を行いましたが、その遺物の実測作業を行っています。京都陶磁器合資会社時代の製品だと想定される粟田焼素地、藤平窯業時代の製品だと想定される「電気もの」磁器類が特徴的な遺物ですが、大半は戦中・戦後の遺物です。近現代考古学の発掘調査成果として基礎的な資料になると思います。なお、平安後期の軒平瓦、中世の瓦質土器鍋も出土しています。六波羅蜜寺に近く、その関連や前身になる遺跡の存在が示唆されます。