2018年3月15日から30日までの予定で亀岡市篠窯跡群で採集した須恵器の実測作業を行っています。昨年4月に踏査した時の資料で、10世紀の資料が中心です。4月からは補足踏査を行う予定です。

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2018年3月24日に大阪市立東洋陶磁美術館の開館35周年記念・日中国交正常化45周年記念特別展「唐代胡人俑―シルクロードを駆けた夢」を見学しました。会期は2017年12月16日(土)~2018年3月25日(日)でした。胡人が大変詳細に表現されており、風俗資料としても貴重な資料でした。土人形の歴史を考える上で中国のは重要ですが、明器を取り入れなかった日本列島との違いの大きさについて改めて考えさせられました。なお、展示品の写真撮影が自由で大変ありがたかったです。国立国際美術館との連携企画「いまを表現する人間像」展も面白い試みでした。

http://www.moco.or.jp/exhibition/past/?e=440

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2018年2月15日より、五条坂で生まれ育った陶芸作家さんの資料をご遺族から預かり、デジタル写真撮影を始めました。作家さんが書かれたメモ・スケッチ類、原稿、絵画、色紙・短冊・扇絵など、多様な資料群です。作品ができあがる背景や過程を知る上でも、重要な資料になります。

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これまで、五条坂の道仙化学製陶所や藤平陶芸の近現代文書を検討してきましたが、この他にも多くの参考になる資料が眠っていると思われます。聞き取り調査も重要だと思います。それらの価値を掘り起こし、末永く保存活用してゆく必要があります。古い工房には支払い伝票や出勤簿などの帳簿類、行政文書などの文書類が保管されている場合があります。また、今回のようにスケッチ類など、作品を作るための素材や過程を示す貴重な図案もあります。こうした多様な資料群によって、京焼の歴史的イメージはさらに補強されてゆくと思います。

2018年1月11日、友禅型彫師の西村武志さんに友禅型紙の製作して頂きました。立命館大学アート・リサーチセンターが所蔵する友禅図案の中から一点を選び、2枚型としました。見本とした友禅の型枚数はそれよりも遙に多いのですが、それを簡便化して活用しやすくしました。また、西村さんオリジナルデザインの一枚型の型紙も製作していただきました。

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2017年に築造・焼成実験を行った「小型三角窯」の実験成果は、2017年11月26日にガレリアかめおかで開催された「アーティスト・トーク かめおかの土と焼き物を巡るおはなし」で紹介しました。ただし、一般市民向けの公開であったため、2018年1月14日、立命館大学朱雀キャンパス209号教室において、より専門的な検討を進めました。

丹波・篠窯跡群に特徴的な小型三角窯は、焚口が二つあること、支柱によって二重床面構造をとっていること、小型であることなど、同時代の須恵器窯とは大きく異なっています。その意味について、陶芸家と考古学研究者の間で意見交換を深めることができました。また、その検討を通じて来年度の計画についても協議しました。

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2017年11月3日~12月3日まで、ガレリアかめおか1階ロビーギャラリーにて、「つながる須恵器職人と私たち」展が行われ、篠窯跡群で発掘された小型三角窯の復元・焼成実験の成果が展示されています。

http://www.galleria.or.jp/eventinfo/exh_sueki

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本研究室も、ガレリア亀岡が主催する実験に積極的に関わってきました。地元の遺跡と地元の土に拘った陶芸家と考古学研究者のコラボレーションは、大変面白い試みです。2017年11月26日には参加した陶芸家のトークショーが開催され、木立が司会を勤めます。

展示解説には次のように説明されています。「このプロジェクトは、学術的成果だけを追求しているのではありません。このまちの歴史と文化を私たち自身がもっと深く知って発信したい、という想いに根差しています」。

陶芸家・綿引恒平さんは「あまり知られていない亀岡の大切な遺跡を市民に紹介したい」「全国的にも特殊で、謎の部分が多い小型三角窯を復元してみたい」「亀岡の土を使いたい」という、多様な希望をもっていました。陶芸家・清水志郎さん、明主航さんも「おもしろい」と言って綿引さんともに強力なチームを作っていただき、何人かの若手陶芸家にも協力して頂きました。考古学研究者にとっても、この試みは大変興味深く、ありがたいものです。そのため、考古学では石井清司さん、水谷壽克さん、高橋照彦さんと木立が参画し、大阪大学や立命館大学、滋賀県立大学などの学生も協力しました。

こうした活動に亀岡市文化資料館も連携しており、第62回企画展「亀岡の土から生まれた~響きあう造形美~」が10月28日から12月3日まで開催されています(有料)。11月3日~12月3日まで「三角窯ってどんな窯」(ロビー展。見学無料)も開催され、木立が製作したテスト・ピースも展示されています。また、講演会も企画されています。残念ながら、亀岡市文化資料館は独自のホームページをもっておらず、2017年11月5日現在、亀岡市役所の文化資料館のサイトでは展示会の案内も確認できません。「亀岡市文化資料館みんなで応援サイト」というフェイスブックで日時などが確認できます。

https://www.facebook.com/kameoka.museum/photos/rpp.455564921181084/1697700026967561/?type=3&theater

2017年10月3日~6日まで千葉市幕張メッセで開催されたシーテックジャパン2017で、ロームの折り鶴プロジェクトが紹介されました。

本研究室はロームの折り鶴プロジェクトに協力し、デジタルアーカイブを進めている京友禅図案(戦前)を提供しました。折り鶴プロジェクトでは、京都の伝統工芸とのコラボレーションを企画されていたため、本学京都学専攻でお世話になっている表具の宇佐見直治氏を紹介させて頂きました。その結果、宇佐見さんとともに金箔工芸の五明久さん、和紙の田中敏弘さんもご協力されました。お世話になって十分に存じあげていると思っていましたが、皆さんの技術力の高さと柔軟さに、改めて驚かされました。

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_DSC5979.JPG半導体メーカーであるロームは、その技術力を分かりやすく紹介するために2015年から折り鶴プロジェクトを公開してきました。2016年までの経緯や様子については、下記の紹介があります。

https://nge.jp/2016/12/29/post-137125

3年目に当たる今回は、「京都の会社」であるという原点に回帰し、京都らしさを活かそうとしたものになっています。伝統工芸の活用方法を試みている本研究室としては、そのような試みに関われ、大変よい経験になりました。下記に会場で流された解説映像がアップされています。

https://www.youtube.com/watch?v=tIsYrqqopdc

立命館大学国際平和ミュージアム第ミニ企画展示 第110回「京都の伝統産業と戦争-陶磁器の活用をめぐって」(2017年9月12日~10月4日、美術工芸研究会主催)に、本研究室で所有・管理している陶器製手榴弾・木銃などを貸し出しました。また、展示準備などの事前調査などにも協力しました。

http://www.ritsumei.ac.jp/mng/er/wp-museum/event/mini/2017/170910/mini_110th.html

2016年8月に五条坂京焼登り窯(元・藤平陶芸登り窯)の発掘調査を行い、戦前まで存在した「西の窯」の基底部が残っていることを確認しました。その成果は2017年5月28日に日本考古学協会総会で報告しました。

しかし、2016年の調査トレンチが狭かったため、その延長を確認すべく、補足でボーリング調査を行いました。その結果、調査トレンチ外にも窯壁の基底部が続いている可能性が高くなりました。かつて京都一の規模を誇ると言われた「西の窯」の痕跡が、想像以上に地下に残っているようです。

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2017年9月25日から同年11月2日まで、京都工芸繊維大学美術工芸資料館で展覧会「纏う図案-近代京都と染織図案Ⅰ」が開催されます。

http://www.museum.kit.ac.jp/20170925.html

木立研究室でデジタルアーカイブを進めている大橋商店の半襟図案(大正期)の中に懸賞付き図案が含まれています。その図案を展示に貸し出し、デジタル写真も提供しました。

展覧会は「明治期を中心に描かれた図案を産業・教育の両面から紹介し、京都における工芸・産業の発展の一側面をご覧いただきたい」という主旨で開催されます。図案の中でも、特に「懸賞付き図案」を中心に取り扱われるようです。本学の資料の位置づけを考える上で注目していますが、近代京都の工芸を考える上でも、大変興味深いテーマです。