- デジタルアーカイブ技術研究班
2009年8月24日
特別セミナー「文化財デジタルアーカイブのための画像技術 ~最先端研究開発とアーカイブ」
デジタルアーカイブ技術研究班で,標記のセミナーを企画しました.
日時:2009年8月24日 9:30~12:00
会場:衣笠キャンパス アートリサーチセンター
司会:八村 広三郎(立命館大学情報理工学部教授)
(1)9:30~9:35 開会のあいさつ 八村 広三郎
(2)9:35~10:15 井手 亜里(京都大学国際融合創造センター教授)
(3)10:15~10:45 橋本 勝(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
(4)10:45~11:15 赤間 亮(立命館大学文学部教授)
休憩 11:15~11:20
(5)11:20~12:00 ディスカッション パネリスト+司会
文化財のデジタルアーカイブにおいては,画像の入力,記録と伝送,出力のそれぞれのプロセスで,対象物の忠実な色の保存と再現が求められます.この中で,画像入力機器による色情報の良否が,後のプロセスに大きく影響を与えるので,これが最も重要と考えられます.
入力では,歪みや明るさのむらなどをできるだけ抑えることはもちろん,照明光の色の影響を避け,対象物自体が持っている色特性(反射や透過)を正しく計測することが求められます.
最近では,デジカメやスキャナなど,一般に普及している機器でも,かなり良質のデジタル画像が取得できるようになりましたが,後世にまで正確に保存をすることが望まれるデジタルアーカイブにおいては,これらの数ランク上の性能と機能が求められ,関係の研究者によって,日々高度な技術開発が続けられています.
一方で,アーカイブの目的は長期の保存ということだけにあるわけではありません.歴史的な絵画や文献,貴重書などを対象として研究を行っている,おもに文科系の研究者にとっては,これらの大量の資料,特に世界各地に散在している資料の画像をネットを使って一同に集め,その上で,現物資料を対象としていた従来型の研究では行えなかった研究を迅速に行えるようにすることも求められます.また,歴史的貴重資料を扱うアーカイブの現場では,単なる技術的性能だけでなく,資料保護の観点などから,細心の注意も求められます.
情報技術開発の現場と,文化財を対象とするアーカイブの現場との間でのミスマッチの可能性を最小限にとどめるために,それらの先端で活躍しておられる講師の方々をお招きし,特別セミナーを企画しました.
井手先生は,襖絵などの大型貴重資料の高精度画像入力と同時に,その絵画を描くのに使われた顔料や絵具を推定する,Pigmarionと呼ばれる画期的なシステムの開発で著名です.また,橋本先生は,1画面全体を1.8億画素の超高解像度で,しかも,それぞれの画素でRGBの三原色だけでなく,6つのバンドの反射特性を計測するマルチスペクトルカメラの開発を行っておられます.これは数年中に100億画素のものを開発する計画と聞いています.一方の赤間先生は,近世を中心とする演劇などの研究者ですが,立命館大学では早くからデジタルアーカイブの可能性に着目し,浮世絵,古典籍などの多くの資料のデジタル化を手掛けておられます.
画像に関わる情報技術系研究者,デジタルアーカイブに関わる文科系研究者の方々のたくさんの参加により,さまざまな観点から議論を進めていきたいと考えています.
八村広三郎(立命館大学 情報理工学部)
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