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合羽摺版画

 合羽摺とは、版画の着色にあたって、着色したい部分を切抜いて穴をあけた渋紙を型紙としてあてがい、その上から刷毛で色を塗る技法である。渋紙は水をはじくから型紙を「合羽」と呼ぶ。馬連で擦りつけていないから色は乗り具合は柔らかく、見た目に非常に素朴なもので、かつ廉価に制作できたはずである。
 合羽摺の版画は、現在でも、大津絵の制作などに使われているポピュラーな物であり、長崎絵や双六・地図などにも事例がみられるが、錦絵を生んだ江戸では浮世絵の着色のためには使われなかったものらしい。後には、大阪でも制作されるようになる。役者絵や美人画、縁起物の風俗画、あるいは風景画も存在している。大阪では、同じ歌舞伎の舞台をあつかった作品が錦絵と合羽摺の両方で残っているものもある。

 さて、廉価に制作できるとなれば、それだけに「使い捨て」の扱いを受ける場合が多く、現在に伝わっている作品は錦絵作品などにくらべると極めて少ない。板木でつける硬質な彩色に対して、刷毛の撫でつけによる軟弱な着色技法は、見た目にも“豪華さ”は乏しく、そのためもあって、あまり注目されてこなかったものである。しかしながら、その制作数は相当に多く、京阪では、合羽摺版画は非常にポピュラーなものであったのである。

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