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NEWS LETTER
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【ISSUE.004】
書跡のなかの宸翰
ゲームアーカイブの構築と活用に向けて

2005年1月20日、立命館大学びわこ・くさつキャンパスの情報理工学部棟1F会議室において、本COEの「文化財の3次元物体モデリングとビジュアリゼーション」サブプロジェクトが主催し、「文化財のデジタル保存・モデリングおよびインタラクション」シンポジウムを開催した。本学をはじめとする大学関係者が92名、企業関係者26名、延べ118名の参加者があった。本稿では、このシンポジウムの開催について報告する。


バーチャルリアリティは新しい3次元メディア表現技術として社会的に大きな関心を集めている。京都に立脚した芸術あるいは芸能・娯楽についての伝統文化や貴重な文化財のデジタル保存、さらにアーカイブ化が実現されれば、バーチャルリアリティ技術により「時間と空間の壁」を越えて、意のままに臨場感を持って文化財を鑑賞し感動を体験することが期待できる。
リアリティを与える技術の中心課題は、実物の有形文化財を非接触で観測した画像データを解析しその3次元物体モデルを生成するコンピュータビジョン(CV)と、高精細な形や色、質感を再現した画像を生成し描画するコンピュータグラフィックス(CG)の統合にある。そこで本シンポジウムでは、微細で複雑あるいは巨大な有形文化財・文化遺産の形状や色彩さらに質感を再現するための3次元物体モデリングと可視化、さらにこれらのデジタル化された仮想物体とのインタラクションをテーマとした。特に、人文科学系のデジタル保存研究等に関わる参加者に対しこの分野の最先端技術の動向がうかがい知れるよう内容を構成した。本シンポジウムではまず、これらの研究の最前線を担う先生方の特別講演と、本COE「文化財の3次元物体モデリングとビジュアリゼーション」サブプロジェクトの研究活動とその成果について発表した。

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以下に、今回のシンポジウムのプログラムを示す。
はじめに、本サブプロジェクト代表者による本シンポジウム趣旨説明、さらに本COEの情報系拠点リーダである理工学研究科八村教授から、「京都アート・エンターテヒンメント創成研究」全体に関する研究報告があった。

引き続き午前は、東京工業大学精密工学研究所佐藤誠教授から「没入型VR環境D-visionとマルチモーダルインタラクション」と題して、マルチモーダルインタラクションにおける特に触覚を提示する最先端研究を紹介していただいた。次に、東京工業大学像情報工学研究施設山口雅浩教授から「ナチュラルビジョン」と題して、従来の色再現性の限界を突破すべく16-マルチバンドカメラを用いた画像獲得と提示方法の研究を紹介していただいた。
午後からは、東京大学大学院情報学環池内克史教授から「「静」と「動」の解析―文化遺産のデジタルコンテンツ化―」と題して、巨大文化建造物や遺跡のデジタル保存の研究・技術最前線とその活動状況を紹介していただいき、活発な質疑を展開した。

引き続き本学関係者の発表に移り、文学研究科赤間亮教授から「光と影の版画芸術―摺物をアーカイブする―」の研究を、COE研究機構Weiwei Xu研究員から「3D KABUKI FACE Modeling from UKIYOE」と題し、歌舞伎の錦絵から正面・横顔の歌舞伎役者の2D顔や、昨年本学で発見された八代目市川団十郎の押隈から、3次元顔構造を復元し、3D歌舞伎役者に口上を語らせるアニメーションを作成する研究を発表した。

立命館大学21世紀COEプログラム
「京都アート・ エンタテインメント創成研究」シンポジウム
−文化財のデジ タル保存・モデリングおよびインタラクション−
日時: 2005年1月20日(木) 10:00〜18:10
会場:立命館大学 びわこ・くさつキャンパス クリエーションコア 会議室(1階)
URL: http://www.cv.ci.ritsumei.ac.jp/~viet/COE/symposium.html
プログラム:
10:00 オープニング
10:05 「21世紀COEプログラム「京都アート・エンタティンメント創成研究」拠点リーダー 」
            立命館大学 理工学研究科 八村広三郎
10:30 招待講演 「没入型VR環境D-visionとマルチモーダルインタラクション」
東京工業大学 精密工学研究所 佐藤誠
11:20 招待講演 「ナチュラルビジョン」
東京工業大学 像情報工学研究施設 山口雅浩
12:10 休憩・懇親会
14:30 招待講演 「「静」と「動」の解析―文化遺産のデジタルコンテンツ化―」 
東京大学大学院 情報学環 池内克史
15:20 「光と影の版画芸術―摺物をアーカイブする―」
立命館大学 文学研究科 赤間亮
15:50 「3D KABUKI FACE Modeling from UKIYOE」
立命館大学COE研究機構 Weiwei Xu
16:20 休憩
16:30 「布の質感と触感の再現・統合・認知に関する研究」
奈良女子大学生活環境学部/立命館 大学COE研究機構  才脇直樹
17:00 「京都建築物のデジタルアーカイブ化―四条通を中心として―」
立命館大学 理工学研究科 田中覚
17:30 「能装束のデジタルアーカイブ化のための布反射特性モデリング」
立命館大学 理工学研究科 田中弘美
18:05 クロージング

午後の休憩を挟んで、奈良女子大学生活環境学部/COE客員教授の才脇直樹教授から「布の質感と触感の再現・統合・認知に関する研究」と題して、布地とのインタラクション(撫でる)に注目した、視覚と触覚を合わせる呈示方法の研究を紹介していただいた。
次に、理工学研究科田中覚教授から、南座など京都の四条通を中心とした仮想都市空間を構築する研究を、理工学研究科の田中弘美から、能装束などの衣装の質感と触感の再現とデジタル保存・アーカイブ化およびコンテンツ化に向けた研究成果を紹介した。
クロージングにて、本サブプロジェクト代表者田中弘美が、発表者および参加者の方々に本シンポジウム盛会の謝意を表した。
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以上のように、本シンポジウムでは、有形文化財のモデリング・デジタルアーカイブ化・コンテンツ化の今後を見据えるうえでの、研究最前線、問題提起および今後の展望に関する認識と活発な議論を共有することが出来たと考える。
なお、昼食時にはキャンパス内のレストラン、ラポーズにてランチをかねた懇親会を開催した。特別講演の佐藤先生、山口先生、池内先生はもちろん、本学の飯田情報理工学部長らの出席を得て、なごやかな歓談のうちに、今後の研究の展開や交流についてのさまざまな意見交換が行われ、親交を深めることができた。これらも、本シンポジウムの学術発表を補完するものとして大いに有意義な時間を過ごすことができた。

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