モーションキャプチャプロジェクトでは、毎年、「モーションキャプチャ技術と身体動作処理」シンポジウムを開催している。これまで、2003年10月3日に衣笠キャンパスの創思館で、2004年10月15日、16日の両日、びわこ・くさつキャンパスの情報理工学部棟1階会議室で行われた。2003年度には約70名、2004年度には約65名の参加者があった。本稿では、2回の本シンポジウムについて報告する。
本シンポジウムは、本COEプログラムの中で、無形文化財のアーカイブ化とデータ解析を主たる目標にした「モーションキャプチャプロジェクト」(プロジェクト代表者:八村)により企画されている。
近年、人体の動きを計測の対象とする「モーションキャプチャ」の技術が開発され、コンピュータゲームや映画の制作に利用されるようになっていることは、よく知られるようになってきた。しかしながら、モーションキャプチャの技術の応用の範囲はこれだけにとどまることはなく、本来、スポーツ科学、医学、リハビリテーション、教育学、心理学、舞踊などの分野でも古くから関心をもたれ、利用されてきている。
さらに、われわれは、モーションキャプチャの、踊りや芸能、演芸などの無形文化財のデジタルアーカイブ化への可能性を追求して研究を行ってきている。
モーションキャプチャ技術はこのように多くの分野で利用されるようになってきているが、異なる分野での利用状況、研究状況については、情報を得ることが困難なのが現状である。また、技術の進歩は速く、モーションキャプチャ・システムの機能や性能は年々進化してきている。このような状況にあって、異分野の研究者間の研究交流を図り、また、あたらな技術的知識の交換と学習のために、モーションキャプチャをさまざまな角度から捉え、議論する場として本シンポジウムを企画している。
このシンポジウムを通して、文化系の研究グループと情報系のグループの交流を図るだけでなく、モーションキャプチャ技術あるいは、身体動作処理に関係する体育、医学、芸術など多様な分野との交流を目指すことを目的としている。
まず、2003年度に開催したシンポジウムについて報告する。プログラムの詳細については別表を参照していただきたい。
初日は、はじめに、本COEの拠点リーダである、文学研究科川嶋教授から挨拶の後、プロジェクト代表者により、「京都アート・エンタテインメント創成研究」全体とモーションキャプチャプロジェクトに関する報告があった。引き続き、本プロジェクトのメンバーによる4件の研究報告が行われた。さらに、午後の部では、特別講演の講師として、モーションキャプチャ・システムの開発販売元である米国Motion Analysis社のKadaba氏をお迎えし、モーションキャプチャ技術の紹介と将来への展望について講演頂いた。その後、舞踊、エンタテインメント、ロボット、医学、スポーツ科学の研究者による6件の研究発表が行われた。
当日は、モーションキャプチャ技術を用いて研究を行っている情報系研究者、人文系研究者、医学系研究者や企業関係者など、幅広い分野から70名を超える参加者があり、講演と共に活発な議論が行われた。「モーションキャプチャ」というキーワードで開催した本シンポジウムであったが、普段はあまり接することのない異分野の研究者の方々と交流することができ、今後の新たな研究交流の展開も予見される有意義なシンポジウムとなった。
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