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2008年02月17日

●シンポジウム発表内容①

崔先生のパネル発表概要です。

韓国の日本近代文学研究の状況
韓国外国語大学校 崔 在喆 (Choi Jae-Chul)  
 韓国における日本文学研究の動向と展望について調べてみた。韓国の日本文学研究関連の学会は韓国日語日文学会(1978年創立)、韓国日本学会(1973年創立)を含め10余りあり、大学付設の日本研究所も10余ヶ所あって、これらの学術誌に発表される論文は今や年間数百編に上っている。
研究者はハングル世代の30~50代の人が大部分で、植民地時代に日本語を学んだ第一世代は皆引退している。日本語教育は1961年韓国外国語大学校に日本語科設置以来のことで、日本文学の研究は大学院(韓国外大)に日語日文学科が設置された1972年以後専攻者を養成し、本格化し始めたと言える。そして、1980年代に入って日本留学帰りの研究者が加わり、活性化していった。
 日本文学の翻訳紹介(1960年『日本文学選集』刊行等)は関心を集め、研究の底辺造りに寄与し、現在は近代の代表的な小説の多数と現代の人気作家の村上春樹、吉本ばななの小説はほとんど翻訳されている。日本文学関連の単行本は1970年代5冊、1980年代は比較文学研究を含めて20冊程度だったが、1990年代に入って増えつつあり、単行本は延べ39巻(編著と比較文学書を含む)、文学史等の翻訳書は11冊くらいである。
 古典と近代文学の研究は大体半々で、近現代の方が増える傾向にある。代表的な古典や近現代作家の研究は盛んに行われている。漱石・芥川・鷗外・藤村・太宰・川端などの研究論文が多く、2000年の総計では上位5人の作家関連の論文が4割を占めている。ほとんど作品論が中心で、これからは各時代・作家に共通する主題別研究の必要性があり、日本の参考文献ばかりでなく国内の先行論文も踏まえて研究を進める時期になっている。日本語学や古典文学分野ではいまだに日本語で執筆する論文の数が半数を占めているが、研究内容を一般化し、共有するために、これからはハングルで書く方向へ行かなければならない。
 日語日文学・日本学分野の学会が多過ぎ、内容・会員が重複して、効率的でないという問題が起っている。各分野別に専門化が望まれる中で、1999年韓国日本近代文学会が設立され2002年学会誌を創刊したのは特記すべきことであろう。
 戦後文学に対する研究は徐々に増えつつあり、近代詩歌と戯曲の研究者はまだ数少ない。韓日文学の関連様相や比較研究、大衆文学にももっと目を向けた方がいいと思う

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