H04すっぽん(花道の迫り)

「大日本六十余州 周防」
English Commentary
絵師:歌川国員 判型:中判/錦絵
出版:文久1年(1861)頃大坂
資料番号:arcUP2141 所蔵:立命館ARC.

【解説】
 本図は、舞台から続く花道の全体の3対7にあたる位置に切られた四角い舞台を上下に動かし、奈落から観客の前に姿を現わしたその瞬間を、客席から見て、実際にその花道の内側がどうなっているかを描いたもの。この迫りを、歌舞伎では「すっぽん」という。スッポンが甲羅から顔を出すように切り穴から顔が出てくることから名付けられた。このすっぽんを使うのは、妖術や忍術を使う場合や妖怪・化身などで、本図でも、忍術を使う尾形力丸が、煙幕とともに表われる場面である。
 「迫り」には、この他、本舞台で床下(奈落)に飾り込んである大道具の大きな屋台などをそっくりそのまませり上げる「大ぜり」、役者の上り降りに使う「小ぜり」がある。
 その始まりは、人形芝居の「祇園祭禮信仰記」金閣寺の場で使われたのを歌舞伎でも模範したと言われている。その後、時代物で多く用いられる演出となった。また、反対に下げる場合は「せり下げ」という。今では電動だが、昔は人力であった。(坂.)
【用語説明】
祇園祭禮信仰記奈落