H03楽屋独案内(廻り舞台)

「楽屋独案内」
絵師:貞信〈1〉 判型:錦絵
出版:天保(1830~1842)頃大阪
資料番号:arcUP0524 所蔵:立命館ARC.

【解説】
〈廻り舞台〉
 床の真ん中にある半分の円の部分に注目してほしい。舞台を円形に切り、心棒によって回転できる仕組みで、舞台装置をその中央に背中合わせに飾り付け、180度回転して場面を転換させる歌舞伎独特の舞台転換設備であり、明治以降外国にも影響を与えている。現在の歌舞伎の廻り舞台は直径60尺にも及ぶ大きなものだが、発生当初は人形劇の影響からきたものであったため小さかった。心棒は回転する軌道のぶれを防ぎ、操作するさまを客席から隠す働きをした。この機構は単に舞台場面の転換を速めるためのみではない。見物の目前で表裏に飾った装置をぐるぐる回すことによって、二つの場面の異なった状況を交互に見せる、通称「行って来い」の演出を可能にした。今は廻り舞台のことを「盆廻し」というが、盆というのは上方の名称で、関東では「廻(まわし)」と呼んでいた。さらに昔は廻り舞台もせり上げと同様に人力で廻していた。舞台の下に担ぎ棒というものがあり、それを肩で押して廻していた。
他にも、小角度に回し建物の横などを見せる「半廻し」というものや、幕をおろして回す「蔭廻し」、照明を落とさずに回すのを「明転(あかてん)」、暗くして回すのを「暗転」などという。(坂)

【用語解説】
〈いってこい〉
ある場面から次の場面にうつり、また、もとの情景に返ること。