A0-1 頼光伝説概観.
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「大江山鬼人退治」 壱~三
絵師:長谷川小信〈2〉 判型:大判錦絵 6枚組の内3枚
出版:明治20年(1887)
所蔵:舞鶴市糸井文庫 所蔵番号:01ル60.【解説】
本作は、頼光説話の全体を示した6枚組の錦絵の前半3枚である(→A0-2)。
このシリーズは、長谷川小信〈2〉による明治20年(1887)の作品ではあるが、当時の頼光に関わる説話の全貌を描いていて興味深い。そして、タイトルが「大江山鬼人退治」であることで、頼光説話は、酒呑童子退治を頂点とする伝説であることがよく理解できる。「壱」 上部に、頼光の夢中に桝花女が現れ、弓矢を与えられる場面。下部は、頼光四天王の一人、坂田公時の出生の逸話が題材として取られている。真っ赤な体の金太郎(怪童丸)が山中で熊と相撲を取って投捨て、鉞を振り上げる姿を、母の山姥が見守り、頼光の命で、金時を臣下にすべく探しにきた渡辺綱が扇を開き、あっぱれと褒めている。(→C1-1)
「二」 上部に羅生門に潜んでいた茨木童子が、渡辺綱の兜をつかみ、奪い取ろうとしているところを描く。このあと、綱は、同時の腕を切り落として奪い取る。下部は、奪われた腕を、綱の叔母に化けて取り返しに来る。童子の腕をみせたところ、その腕を奪い、茨木童子の姿に戻り、天空に逃げ帰る。(→D0)
「三」 上部では、頼光一行が市原野で牛の皮を被り待伏せした鬼童丸を、坂田公時、碓井貞光、卜部季武ら、頼光四天王が取押さえようとしている。後ろには馬に乗った源頼光とそれを守護する渡辺綱が描かれている。牛皮に綱の放った矢が刺さっており、隠れていた鬼童丸が刀を抜き、飛びかかろうとしている。画面下部では藤原保昌と盗賊袴垂とが遭遇した場面。後ろから袴垂が、隙を狙っているが、優雅に笛を吹きながら歩く保昌には、全く隙が見いだせず、攻めあぐねている。(→B0)(a).【参考文献】
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佐藤和彦編『中世の内乱と社会』(東京堂出版,2007)
岡本麻美「逸翁美術館所蔵「大江山絵詞」考ー酒呑童子説話と土地の記憶ー」(美術史58(1),pp69-84,2008) -