ボロブドゥールの浮彫:仏伝「出家踰城」

ボロブドゥール第1回廊
8~9世紀
中部ジャワ州マグラン県、インドネシア

 上段にあらわされたのは「出家踰城(しゅっけゆじょう)」の場面です。このお話は、サーンチー第1塔の東門浮彫(仏塔の源流:サーンチーその2)のところでも言及しましたね。カピラバストゥをおさめるシャカ族の王子として生まれ育った釈迦は、様々な出来事に遭遇する中で思い悩み、やがて、これまでの生活を捨て、城を出て修行する決意をします。とはいえ、王子という立場のため、白昼堂々と家出することなど出来ません。そこで、夜、皆が寝静まったのを見計らって、こっそりと城を抜け出します。その際、天の神々たちが手助けをしたのでした。
 画面の左に、愛馬カンタカに乗る釈迦があらわされており、足音が鳴り響かないように馬の足元を支える神々がいるのは、サーンチー第1塔の浮彫とまったく同じですね。しかし、サーンチーの時期と違い、ボロブドゥールが造営される頃には、すでに釈迦の姿を表現するのがあたり前になっているので、馬上には釈迦の姿がしっかりとあらわされています。馬や天の神々が、向かって右から左方向へとスピード感あふれる描写になっている点も見どころの一つです。

▶次のページ

◀前のページ

◀◀このコーナーのトップへ戻る

arrow_upward