奉天・東方書店(小説)

東方書店版 小説単行本

縦18.2cm 横12.8cm、396頁

1943年? 奉天(現在の瀋陽)

未整理

三須祐介所蔵

本書は、満洲国奉天(現在の瀋陽)で刊行された版本です。傷みが原因による背割れが生じたか、上下に分かれていますが、下は明らかにかつての所有者が自分でデザインした表紙となっています。写真はもとの一冊本であったときの表紙であったと思いますが、扉には「(上)」の文字が手書きで付け加えられています。同じ頁に「奉天 東方書店」の文字が見えます。しかし奥付が失われており刊行年は不明ですが、先行研究によれば1943年の刊行であろうと思われます。また、「前言」が1942年7月7日の日付で付されており、これは最初の単行本である金城図書公司のものと同じです。

百新書店版では「日本などの侵略国家」と記されている箇所は、日本の支配下にあった満洲国では許されるはずもありません。もともとの「野心を抱く諸外国」でもなく「陰険さを潜ませた悪徳な有力者や偽善者に合わせるような人々」となっています。邵迎建氏の研究では、東方書店版は「英米などの西洋国家」と記されていると指摘しており、あるいは満洲国における版本にも複数のバージョンがあったのかもしれません。

ちなみに、新中国建国後の1956年にも修正が施され、1957年に上海文化出版社より刊行されています。この版本では日本は名指ししていませんが、「あれらの侵略国家」と記して外国の勢力であることをほのめかしています。

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