百新書店(小説)

百新書店版 小説単行本

縦18cm 横13cm、368頁

1945年6月 渝第一版/1946年6月 滬第一版

未整理

三須祐介所蔵

本書の冒頭に作者の秦痩鴎じしんが「秋海棠的移植」という文章を書いて、新聞連載から単行本の刊行、舞台化、映画化の経緯をまとめています。小説単行本の最初の版本は、金城図書公司版で、『申報』連載終了後半年の1942年7月に刊行されています。この百新書店版は、日本敗戦の2か月前、1945年6月に重慶(渝)で刊行され、さらに1年後に上海(滬)でも刊行されたことが奥付からわかります。

主人公が「秋海棠」という芸名にするにあたり、秋海棠の葉は中国の地形を表すこと、それをかじる毛虫は中国を食い物にしようとする外国勢力だと説明し、この名前が愛国の象徴であることをほのめかす場面があります。邵迎建氏は、異なる社会背景の版本によって、この部分が4回書き直されていることを指摘しています。日本との戦争の只中にあり、しかも中国国民政府の拠点であった重慶での刊行である本書においては、「秋海棠の葉をかじる毛虫」が意味するものとして「日本などの侵略国家」が明記されています。

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