藝華滬劇団 (1950年代)

藝華滬劇団 滬劇『秋海棠』(藝華劇刊第七期)

縦12.1cm 横17.2cm、12面

1950年代? 上海

資料番号 zgXD020-07

三須祐介所蔵

展示している滬劇『秋海棠』の上演資料で最も古いものと考えられます。滬劇の『秋海棠』は小説の舞台化のなかでは最も早く、小説の最初の単行本が刊行された1942年7月から約5か月後の11月に文濱劇団によって舞台化され、61回を数えるロングラン公演となりました。その後滬劇だけでも複数の劇団によって上演され、新中国建国後もそれは続きました。藝華滬劇団は1951年に、文濱劇団を母体に改組され成立した劇団です。上演期日の情報がありませんが、この「劇刊」が第七期であることなどを考えると、50年代前半までに上演されたものだと思われます。

表紙は京劇の舞台を抽象化したようなデザインが施され、見返しには役者のブロマイドがコラージュされています。また最初のページには、上演場所が新光大戯院であることが記されています。新光大戯院は1930年に建てられ、上海における主力の映画館でしたが、30年代後期以降、京劇や滬劇の上演場所になりました(寧波路586号)。

 特筆すべきは、劇の梗概や配役表などの他に、歌詞が一部抜粋されていることです。伝統劇である滬劇も、セリフやしぐさだけでなく、唱が重要な位置を占めています。観客が一緒に口ずさみ、観劇後に反芻するなど、鑑賞の重要なポイントでもあります。最後のページにはラジオ放送の情報も掲載されていますが、中国の伝統劇は耳だけで楽しむこともできることのひとつの現れともいえるでしょう。

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