楊家埠木版年画

年画は中国各地で生産されてきました。道具、素材、技術、様式、販売価額など産地ごとに個性があり、それはそれぞれの産地の自然環境、地理的条件、文化、経済、そして政治などの要素と密接に関わっています。中国の三大年画産地として天津楊柳青と蘇州桃花塢と濰坊楊家埠が広く知られています。今回の展示の前半においては楊家埠の木版年画を主題とします。

楊家埠は中国・山東省濰坊市の北部にあり、面積18.2㎢、人口約1000人のごく小さな村です。まず、この地での年画の歴史を概観していきましょう。楊家埠木版年画の開祖は四川から山東へ移住してきた楊伯逹(ヤンプォダ)とされていて、彼が1399年に画店「同順堂」を開店しました。しかし、17世紀の明代末期に戦乱が続いたため、作品はほとんど残っていません。清朝に入って、政情が比較的安定すると、楊家埠の年画制作は開花期を迎えました。楊家埠木版年画博物館の解説は当時の盛況について「画店过百,画种过千,画版上万(画店は百を超え、年種は千を超え、版木は万を超えた)」と述べ、当時楊家埠地方の画店は151軒あったとされています。楊氏の同順堂以外にも大型の画店が木版年画を大量生産し、楊家埠年画は山東省全体そして全国各地へと広まっていました。

地域の年画と違って、楊家埠年画の制作は専業の画匠ではなく、中国黄河流域の農民が農閑期を利用して作り出した郷土色が大変強い民間芸術です。年間制作過程は農作業の暦や地域の年中行事と連関し、農作業とバランスを取りながら日程が細かく定められていました。農民の生活と密接し、題材・内容も豊富であり、比較的に単純な構図誇張された造形でありながら精細な技法豊満にして大胆な色使いが、楊家埠木版年画の特徴といわれています。

写真撮影:張憲、2017年10月於楊家埠

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