ビジュアル・ツアー『三国志平話』 04 一騎当千の呂布

【16】三人が呂布と戦う

虎牢関に集まった諸侯軍は、徐州太守陶謙配下の曹豹、長沙太守孫堅らが兵を出すが、呂布の前に敗戦を重ねる。3日目、いよいよ張飛の出番である。呂布との激闘は勝敗がつかず、そこへ関羽と劉備が加わる。さすがの呂布も虎牢関に逃げ込むしかない。

右側から見てゆくと、勇ましい騎馬の劉・関・張が一人ずつ現れ、さすがにその勢いに圧倒された呂布は、なんとか虎牢関に逃げこむ、という物語が語られます。構図は「【09】黄巾を破る」とほぼ同じで、右から左へ時間、物語が進んでゆきます。


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【18】呂布が董卓を刺す

呂布が屋敷に帰ってくると、音楽が聞こえてきて、貂蝉が董卓と一緒にいると知る。呂布は董卓を探すなか、薄着の貂蝉に出会う。董卓が酔っていると聞くと、後堂に入り、「老賊、無道め!」と叫び董卓を刺し殺す。

『三国志平話』の中で、貂蝉は戦乱中に呂布と生き別れになった妻という設定です。『三国志演義』には見られない設定ですが、元代の演劇ではむしろこちらが「普通」だったようです。

構図は「【11】張飛が太守を殺す」とほぼ同じであり、右面の静謐な場面から、左面への凶悪な場面へと移行します。右面にいる貂蝉の眼差しが、左面を導きます。


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【20】張飛が三たび小沛を出る

小沛というまちで劉備たちの軍勢は、圧倒的な呂布軍に包囲されて、ピンチに陥る。張飛は曹操のもとに援軍をたのもうと、単騎でその鉄壁の包囲を破る。

こうした後世の『三国志演義』には見られないエピソードが、この時代に楽しまれていたことが分かります。『三国志平話』の巻上における主人公は張飛だといわれるのもうなずけます。

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国立公文書館内閣文庫蔵『全相平話』『至治新刊全相平話三国志』巻上

16葉・18葉・20葉の図像部分「三戦呂布」「呂布刺董卓」「張飛三出小沛

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