前懸の新調

ID:nagaeke_1757、資料形態:現像写真(148㎜×101㎜) 

 1923(昭和8)年に船鉾の前懸が新調された際に撮られた町内の旦那衆6名の記念写真です。この前懸は「雲龍波濤文様綴織」といい、波間を飛ぶ龍が力強く描かれています。下絵は大正・昭和期の染織家で文化功労者の山鹿清華(1885~1981年)によるものです。この前懸は舳先の下に懸けられ、現在でも同じものが使用されています。向かって左から3人目の人物が長江伊三郎です。また一番右端には、船鉾町の在住で、山鉾連合会の会長も当時務めていた清水良亮の姿も見られます。鉾の周囲に埒が設置されていないので、組み上がり直後か巡行直前、もしくは直後に撮影されたものと考えられます。当時の新町通の街並みや鉾に桟橋をかける町会所の外観も分かる資料としても貴重な一枚です。

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新調前(左:nagaeke_1753)と新調後(右:nagaeke_1753)の前掛け

 旧前掛は、波濤に飛龍文様綴織」と呼ばれ、綴織、紋織、刺繍、絽刺などの技法を用いて作成された中国の椅子覆いから製作されています。17世紀前半に中国から日本に伝わったとされ寄進覚の1778(安永7)年の記録には「舳隠紅地綴錦幕一掛」と船鉾に寄進された記述がみられます。新調品と似たような構図ですが、描かれる龍の表情は柔らかく、鶴の体の向きや龍の格好、海の描写などが異なります。

撮影場所の現在の様子 

かつての京町家の街並みは、町会所と長江家住宅を除くと、ほとんど失われています。

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