船鉾

 ID:nagaeke_1814、資料形態:現像写真(162㎜×119㎜)

 長江家住宅と同じく、京都市下京区新町通仏光寺上る船鉾町に所在する船鉾は、京都祇園祭の前祭巡行の最後尾を進む山鉾です。船を模した特徴的な鉾の形態は、『古事記』や『日本書紀』にみえる神功皇后の外征に由来し、その出陣の船の姿をモデルとしています。舳先には、「鷁(げき)」と呼ばれるを空想上の水鳥が据えられ、風を受けて空へ羽ばたこうとするその姿から、航海(巡行)の安全を祈願しているものといわれています。木彫総金箔押の鷁は、長谷川若狭の作とされており、尾内部には、「宝暦一四歳申六月 七日 船鉾之町 年寄 北 三右衛門 同 南 市左衛門」と墨書があり、1764年に当時南北で分かれていた町内(北袋屋町・南袋屋町)の両年寄が寄進したものです。また、欄縁の下に掛けられる雲龍模様の下水引は、円山応挙に学んだ西村楠亭による下絵で、文化・文政期頃の作と考えられています。その制作には、肉入り刺繍の技法が用いられ、他の山鉾のなかでも、最も立体感のある懸装品となっています。

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鷁の頭部(公益財団法人祇園祭船鉾保存会)    現在の船鉾の巡行の様子(佐藤撮影)

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