法帖(左版)の板木
左版『秋興八首』板木 延宝9年(1681)
横82×縦26.6cm
奈良大学博物館所蔵(T0645)
左版は、凸版とは逆に、板木の上で書の部分を彫り込んだ手法を指します。摺刷結果の陰陽も凸版とは逆になり、背景が墨摺りとなり、文字が白抜きとなります。凸版の板木と同様、板木の上に墨を置いて摺刷がなされるため、板木の上では文字が左右反転しています。むろん、法帖は中国・朝鮮半島にも存在しますが、法帖の摺刷に左版を採用しているのは日本だけであり、おそらく、中国から届く原拓の風合に擬すためのチャレンジだったと考えられます。展示品は延宝9年(1681)『秋興八首』です。祝允明(祝枝山)が書した杜詩の模刻ですが、展示品のように草体の法帖には、草書の横に楷書で文字を添える例が見られます。左版の特徴としては、墨が背景に均一に載らず、バレンが通った跡を確認できます。


『秋興八首』板本 延宝9年(1681)
立命館大学アート・リサーチセンター(arcBK01-0083)

参考文献
岩坪充雄「唐様法帖の書誌学的問題点」(2006、文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要5)
中野三敏「拓版のこと―『乗興舟』讃」(2011、『和本のすすめ―江戸を読み解くために』、岩波書店)

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