No.10J~N 十巻章

No.10J 端食の痕跡(声字実相義)   藤井文政堂所蔵(FK0043)
享保17年(1732)
縦15.7×横6.7×厚0.6cm

No.10K 端食の痕跡(弁顕密二教論)   藤井文政堂所蔵(FK0026)
享保17年(1732)
縦20.1×横6.5×厚0.7cm

No.10L 鋸引きの痕跡   藤井文政堂所蔵(FK0089)
享保17年(1732)、近代摺
縦20.2×横13.4×厚0.6cm

No.10M 十巻章(10冊本)   立命館ARC所蔵(arcBK01-0061)
享保17年(1732)、近代摺
大本2冊(欠8冊)

No.10N 十巻章(10巻合1冊本)   立命館ARC所蔵(arcBK01-0053)
享保17年(1732)
大本1冊

 No.10A~Iの板木は、原初の姿ではない。それを示すのが展示No.10J~10Kの2点。これらは板木の両端に施される加工(端食、反り止め)である。また、展示No.10Lに見られるように、いくつかの板木の裏側には鋸引きの痕跡があり、板木を2枚におろして半丁ずつに分断したようである。板木の欠落が4丁単位であることとも考え合わせて、これらの板木の元の姿は、四丁張の板木だったと考えられる。四丁張の板木を半丁ずつに解体した理由は、1セットの板木で袋綴じと粘葉装の双方を摺刷可能にするためだったと思われ、智山書庫には粘葉装の享保17年版『般若心経秘鍵』が伝存していた旨の記録も残る(ただし、現在は欠本)。展示No.10M~Nはこれらの板木で摺刷された板本で、いずれも近代摺である。なお、他に沢田友五郎の奥付を持つ近代摺の同板本が存在することから、藤井文政堂に伝存しない4丁単位の欠落箇所の板木は、沢田のもとにあったと考えられる。