本研究課題は、近年注目を集めるStructure from Motion (以下;SfM)の技術を応用し、徳島市立徳島城博物館が所蔵する近世から近代にかけて製作された甲冑を3次元的にデジタルアーカイブし、その成果を公開することを通じて、博物館資料をより地域に還元するためのフローを構築し、モデルケースとなることを目指す。これまで、甲冑はガラスケース内での展示やカタログ用の写真撮影では、一定方向の視点からのみしか見ることができなかった。しかし、甲冑は数十の部位から構成されており、その各部位一点一点、さらには裏側にも、魅力的な装飾が施されているものも多い。これらの普段見えない部位の魅力を伝えることを模索したところ、SfMを活用したデジタルアーカイブを取り入れたプロジェクトを着想するに至った。これにより、PCの画面やモバイル端末を通して、多様な視点から甲冑を閲覧できる3Dモデルデータを作成して簡易に閲覧できるようにしたい。本研究課題では、徳島市立徳島城博物館が所蔵する「紫糸威大鎧」(徳島県指定有形文化財)をはじめとした甲冑群の3次元計測、モデル化、閲覧システムの構築、そして、一般公開することまでを目標とする。将来的には、これらの蜂須賀家代々の藩主が身に着けたとされる甲冑の実物展示を見ながら、モバイル端末で3Dモデルを見るといった博物館展示の新しい取り組みも始めており、今後の展開が期待される。