11月19日(土) 基調講演1
長尾 真(国立国会図書館長)
国立国会図書館における電子図書館への努力
国立国会図書館は国立の唯一の図書館であり、納本制度によって国内で出版される全ての本を収集、保存し、利用に供している。当館の第一の使命は国会に対するサービスであるが、国民にも広くサービスを提供している。蔵書は図書が約970万冊、雑誌が約970万冊のほかに、新聞や古典籍、マイクロフィルム、音盤、その他を合計すると約3750万点となる。
電子図書館の構築は2002年からやりはじめたが、2009年には大きなディジタル化予算を獲得した結果、現在では100万冊を超える電子図書館となっている。当館に来ればこれら全てのディジタル化資料を見ることができるが、著作権法の制約のもとにあるので、著作権の切れたものしかネット上に公開できない。それでも古い東京や京都、大阪の写真、江戸時代の本、絵巻物、画集、あるいは歴史的に価値の高い手書きの文書類などをネット上で楽しめる。
世界電子図書館(World Digital Library)は世界各国の代表的な図書館の持つその国の文化財的資料をディジタルで見ることができるシステムで、それらの国の文化の一端を知ることができる。当館もこれに出展している。
ディジタル資料を作るには技術的に種々の問題があるうえに、これからは図書、雑誌などの外に、音声、音楽、動画像、また3次元立体像やお祭、舞台芸術、伝統工芸品の作成過程等の無形文化財の映像資料などまでを収集の対象とする必要が出て来る。そしてそういった対象に対してどのようなメタデータを付与すれば目的とするものが正しく取り出せるかという問題を早急に解決しなければならない。
こういった各種資料の活用については国内だけでなく国際的な視野をもつことが必要である。当館においては漢字文化圏である中国と韓国の国立図書館の資料を機械翻訳システムを用いて相互利用できる道を開いた。このようにしてグローバルに種々のカテゴリーの知識を有機的につなぎ、活用することによって、創造性を高めることのできる知識システムの構築を目指している。
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