鷹
たか
画題
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解説
画題辞典
鷹を馴養して鳥を捕ふることは我が邦にては古くより行われしことにして天武天皇の時名鷹磐手野守あり、延喜の時白石鷹あり、宮中に特に鷹の曹子の置かれしほどなり、武家時代になりて武技の一として鷹狩の盛に行われて鷹を愛好さる風亦益盛なり、新修鷹経の序に鷹を説いて曰く「夫鷹者俊鳥也、稟瑤光之精氣生鍾岱之増巣驍材自天、雄姿邈世春化為鳩仁也、秋至行戮義也、食不忘先静也、誅不敬強勇也、動無遠物不覧、物有形而尽見智也、成君子之娯楽、助庖饌之宰宍以彼一物兼茲衆美、雖同族於羽毛固殊慧而抜華慶長已」後馴養されて格に繋がるゝ鷹の画かるゝもの多し、自然界の鷹の画亦固より少からず。
曽我直庵筆(島津公爵所蔵)、同(田岡氏旧蔵)等は馴養の鷹の図にして曽我直庵筆(秋元公爵旧蔵)、狩野山樂筆(大谷伯爵所蔵)、立原杏所筆(菊池謙二郎氏所蔵)等は自然界の鷙鳥としての鷹の図の名高きものあり。尚鷙鳥の条参照せよ。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
鷹は鷲と共に鷲鷹科に属す猛禽類で、古来狩猟に使はるゝこと洽く知らるゝ処、その種類も少く無い、先づ蒼鷹最も普通の種類であり、鷂は雄を特にとのりと呼び、雌は雄より著しく大きく、雀鷂は雄を特に悦哉と呼ばれ、この三種最も多く鷹狩に用ひらる、隼は大隼、赤胸隼などの種類があり少しく小形で敏捷、また狩猟に用ひらる、外に角鷹がある、本邦特有の種類にして小さい羽冠を有するので、一見して直ちに他種と区別される、鷹狩には使はれないが、野兎などを捕食する処から、飼ひ馴してその駆除に使用する地方もある、のすり、ちうひ、長元坊などの種類もあり、白鷹は特に珍種として尊重される、鷹の相といふものがある、此鳥総て姿勢端厳で威風堂々たるものあるが、その頭頂は平かにして中高く、眼光清和明星の如く、瞳子動かず、鼻孔大きく、嘴は大きく直く、且つ黒く、潤沢にして肩剛く、翼羽長くして直く、腋羽、覆羽薄く脾長く脛短く肥満し足は踝大きく指長くして大きく爪は黒く潤ひのあるものをよしとする。
たかは猛き鳥の意で鷙猛と称し、或は高く飛ぶ所から「たか」と呼ぶと称せられ、又、性極めて怜悧なので、賢鳥の名もある、故に絵画は勿論、芸術には交渉極めて深く、英雄独立、振威八荒などの画題となり(其項英雄独立振威八荒参照)或は松の老樹に配せられ、或は架に据ゑたる処を描くなど枚挙に遑もない、左に鷹の名作を挙げる。
伝徽宗皇帝筆 『鷹八図』 京都天竜寺蔵
雪舟筆 『松鷹屏風』 ボストン博物館蔵
雪村筆 『松鷹図』 京都曼殊院蔵
曽我直庵筆 『松鷹屏風』
同二直庵筆 『柏鷹屏風』 京都大徳寺蔵
狩野探幽筆 『鷹の絵馬』 川越東照宮蔵
狩野山楽筆 『鷙鳥屏風』 京都西本願寺蔵
蛇足筆 『松鷹図』 神戸田村家旧蔵
狩野永徳筆 『松鷹屏風』 東京美術学校蔵
なほ近くは荒木十畝筆『白鷹』(第八回帝展)根上富治筆『鷹』(第四回帝展)福田翠光筆『はぐくみ』(第十二回帝展出品)など好評を博した。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)
眼及び眉間のひそみに一種の鋭い気を示し、鷹の名ある所以を肯かせる、『逆矛』『項羽』『船弁慶』『松虫』の後シテ等に黒頭を著して用ひる。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)