謡い物の歴史 3/4

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

歌舞劇としての能の母胎

当初の謡い物は、能とは別に作られたものが多い。能の大成期には、季節ごとの祝言(しゅうげん)の謡など、場に合った縁起物(えんぎもの)としての謡や、和歌的な言葉を(つづ)った叙情的で美しいメロディを持つ謡、もののいわれや有名な物語を語った叙事的でリズムの面白い曲舞(くせまい)謡など、上層階級の要望に応えるような謡い物が数多く生まれた。そして評判のよい謡い物からは、それを組み入れた舞台芸能としての能の曲が作られるようになる。

能が歌舞劇(かぶげき)などと呼ばれるのも、大成期に作られたそのような謡い物が能の本文のまとまった材料になり、前時代より韻文(いんぶん)的な詞章が増えたことが大きく関係している。