DH-JAC2009 第1回日本文化デジタル・ヒューマニティーズ国際シンポジウム

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略 歴

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ヨーゼフ・クライナー
Josef Kreiner

法政大学企画・戦略本部 特任教授、法政大学国際日本学研究所 兼担所員、ボン大学 名誉教授。

 専攻は民族学・文化人類学。沖縄研究やヨーロッパで保管されている日本コレクションをテーマに研究を行っている。


■ 主な著作・論文

「ヨーロッパの博物館・美術館保管の日本コレクションと日本研究の展開」(星野勉編『国際日本学とは何か―内と外からのまなざし』三和書籍、2008年)
「モーツァルトと日本―『魔笛』における『日本の狩衣』」(星野勉編『外から見た<日本文化>』法政大学出版局、2008年)
“Modern Japanese Society”(共編著, Leiden: Brill, 2004)
“The Road to Japan”(編著, JapanArchiv;Vol.6, Bonn, 2004)
“Der Russisch-Japanische Krieg”(編・著, Bonn: Bonn Univ. Press, 2005)
“Japanese Collections in European Museums”,Vol.1,Vol.2(編・著, Bonn: Bier'sche Verlagsanstalt, 2005)
“Japaneseness versus Ryukyuanism”(編・著, JapanArchiv; Vol.8, Bonn, 2006)


要 旨


「ヨーロッパの日本コレクション
 −その日本観及び日本研究における意味と役割」

 ヨーロッパの美術館・博物館をはじめ、王宮殿当や公人コレクションに約50万点以上の日本美術・工芸と民具・生活用品のコレクションが保管されている。古くは16世紀の骨董陳列室(クンストカンメル)に遡る漆器、屏風、武具や陶磁器、あるいは生活用品として愛された着物は、ヨーロッパ人の想像を刺激し、非常にポジティブな日本観を作り上げた。この日欧交流の早期の蒐集は多くの場合19世紀末頃設立された国立博物館の基礎になる。ケンペルのコレクションは大英博物館、大シーボルトのそれはライデンとミュンヘン民族学博物館、小シーボルトのものはウィーンの国立民族学博物館と応用美術館の最も早いコレクションの一つであると同時に、ヨーロッパの日本研究の出発点でもある。
 しかし、19世紀半ば近代科学のーつとして設立された日本学(ヤパノロギー)は、殆ど例外なく文学・文献学として理解されていた。20世紀後半漸く変化し始めたパラダイムは今度は社会科学の側面を重んじた。コレクションの膨大な資料は未だに日本研究の視野に入っていないのが現状である。この問題を真正面から取り上げながら、ボン大学日本文化研究所は昭和56年初めて中部ヨーロッパの美術館・博物館・公文書館等の担当者を招き、日本コレクションの歴史や現状を討論した。このシンポジウムの席上でヨーロッパ日本資料担当者の学会(EAJS)が生まれたー方、ドイツ連邦政府の研究費により、ヨーロッパに保管されているアイヌ民族文化及び琉球・沖縄関係のコレクションの網羅的調査研究企画も形を整えた。次の段階として、今度はトヨタ財団の援助をもって(ロシヤを除いた)全ヨーロッパの約60ヶ所の日本コレクション担当者に依頼し、総合的な概観を掴む事を試みた。その結果として、およそ300ヶ所の博物館・美術館の日本コレクションについて報告を得られ、博物館間の協力体制を強化するためのネットワーク「ENJAC」が生まれた。プラハでのシンポジウムに引き続き、次回はチューリッヒ大学が日本の仏教美術コレクションについてのシンポジウムを検討している。
 講演は、ヨーロッパに於ける日本関係コレクションの歴史と現状のアウトラインを提示し、その文化交流おける意義と役割を解明しようと試みる。