D3-4 「けい事大当り 山姥 金時 市川団蔵」

資料名 : 「けい事大当り 山姥 金時 市川団蔵」
作者 : 有楽斎長秀
員数・装丁・判型 : 細判合羽摺 
年代 : 
資料番号 : arcUP4706

 
 近松門左衛門による浄瑠璃「嫗山姥」(こもちやまんば)は、人形浄瑠璃として正徳2年(1712)竹本座で初演され大当りを得た。歌舞伎としても寛政7年(1795)大阪角の芝居で初演されて以降上演が重ねられてきた。全5段構成で、能「山姥」や古浄瑠璃を題材に坂田金時の出生譚、頼光四天王らが頼光と主従を結ぶ経緯が描かれる。二段目は元傾城の八重桐(のちの山姥)が自らの境遇を滔々と語る場面が見せ場のひとつで、「廓噺」や「しゃべり山姥」とも呼ばれ、今日も文楽・歌舞伎ではこの段のみ演じられている。なお、二段目で八重桐のかつての恋人・坂田蔵人が自害し、その魂が八重桐の胎内に宿り、八重桐は山姥へと変貌を遂げ、のちに金時(怪童丸)が生まれる。怪童丸が頼光に仕える場面は四段目にあたり、山姥物の舞踊劇の源流とされている。最後は高懸山(甲掛山)の鬼退治を果し幕引きとなる。
 本作も「嫗山姥」に取材した役者絵であると考えられる。廉価で制作が可能な合羽摺の技法を用いており、画中には「けい事大当り 山姥 金時 市川団蔵」とある。市川団蔵が山姥、あるいは金時(怪童丸)を演じた記録は管見の限り確認できず、本作に関する上演情報は未詳である。役者の似顔は団蔵というよりも、三代目中村歌右衛門(1778~1838)の特徴をとらえているといえる。

arrow_upward