A2.2勝川春好の大顔絵

石川五右衛門〈1〉中村仲蔵
絵師:勝川春好 判型:大判錦絵
出版:天明8年(1788)
所蔵:東京国立博物館 作品番号: A-10569_1604

勝川派を代表する絵師である春好の重要な功績は扇面枠のない無背景に役者大首絵を描く様式を確立したことです。特に天明5(1785)年から寛政初期の役者大首絵の一群が本作を含み十七点確認されています。画面一杯に役者の顔面に接近するこのような絵は「大顔絵」と称されることもあり、作画姿勢の大胆さは師である春章を凌駕していると言えるでしょう。本作は春章も多く描いた中村仲蔵を描いたものです。仲蔵が演じるのは安土桃山時代の大泥棒をモデルにした石川五右衛門。月代が百日ほど伸びた様子を表わす百日鬘は敵役の象徴で、ここでも印象的に描かれ、凄みを増しています。
勝川春好が春章の様式を重んじ、踏襲していたことは彼の通称からも窺うことができます。師である勝川春章は壺の形の印を用いたことから壺屋と称されましたが、春好はその弟子として小壺と称されました。(戸)