E06隈を取る和事

「花川戸助六 市川団十郎」
English Commentary
絵師:国貞〈3〉 判型:大判/錦絵3枚続の内1枚
上演:明治29(1896)年4月30日東京・歌舞伎座
外題:「助六由縁江戸桜」
資料番号:arcUP2783 所蔵:立命館ARC.

【解説】
 九代目市川団十郎による花川戸助六を描いた役者絵である。蛇の目傘を片手で高く掲げ仰ぎ見る姿は、花道でのから本舞台に粋な雰囲気を漂わせている。「助六」は正徳3年(1713)4月江戸山村座で上演された「花館愛護若」の中で、二代目市川団十郎が初演した。二代目市川団十郎は初代の荒事を継承しただけでなく、初代にはなかった和事風の役柄も演じた。 花川戸助六は、吉原の傾城三浦屋揚巻のもとに通う江戸の伊達男であり、和事的な要素の濃い役どころである。顔面には「むきみ隈」を取り、花川戸助六の色気と、実は曽我五郎時致という豪快さを合わせ持たせている。
 扮装は黒羽二重に紅絹裏の小袖、緋縮緬の襦袢を着て、団十郎の定紋三升と寿海老を織り出した幅広の博多帯を締めていることが本図から見てとれる。黒羽二重や蛇の目傘には杏葉牡丹の紋がある。鬘は生締めである。助六のこのような扮装は蔵前の札差などの町人が真似したという。(本.)

【用語解説】
助六由縁江戸桜むきみ隈生締め