E1-1 鞍馬天狗. 『能楽図絵』「鞍馬天狗」 絵師:月岡耕魚 判型:大判錦絵出版:明治31年(1898) 所蔵:立命館ARC 所蔵番号:arcUP0876. 【解説】 本作品は、能画の代表的絵師月岡耕漁による「鞍馬天狗」である。「鞍馬天狗」のあらすじは、以下の通り。 鞍馬山の東谷の僧が大勢の稚児を連れて花見に出かけ舞などに興ずるが、そこに見知らぬ山伏がきて見ているので、興をさまして立ち去る。一人残ったのは、牛若丸で、平家の稚児達に混じり、のけ者にされていることを告げる。山伏は、一緒に山々の桜を見て歩き、自分はこの山の大天狗だと明かして、僧正ヶ谷に立ち去る。翌日、牛若丸が長刀を持って待っているところへ大天狗が他の天狗達を引連れて現れ、配下の天狗等を遣わし牛若に兵法を伝授し、そして張良の故事を物語る。やがて、牛若が平家を西海に滅ぼすことを予言し、将来の守護を約束して去って行く。 本作は、この内、後場の兵法伝授から張良の語りの場面を描いていると思われる。大天狗の面は、目を怒らし、小鼻が大きく張り、口を結んでぐっと横にへし込んだ面で、「大べしみ」(E3)と呼ばれる。前場が面を着けない直面であるので、その変化が激しい。 「鞍馬天狗」の中では、大天狗は、豊前坊、相模坊、伯耆坊などの日本各地の天狗らを遣い、天狗の頭領として位置づけられており、鞍馬山僧正ヶ谷の異界性が強調される。そしてこれらの小天狗(烏天狗)が義経の兵法の稽古相手になったり、大天狗に「僧正坊」とい名前が後に付与されるのは、この能「鞍馬天狗」の影響が大きいのである。(近a). 続きを読む ≫ 【参考文献】 石黒吉次『中世の演劇と文芸』(新典社,2007)大和岩雄『天皇と天狗」』(白水社,1997)早稲田大学演劇博物館『演劇百科大事典』(平凡社,1986)西野 春雄 羽田 昶『能・狂言事典』(平凡社,2011) ≪ 続きを隠す 投稿日:2016年10月25日 by 8P カテゴリ: E 天狗 [編集]