白とグレーの「東南の風」

「孔明 七星檀(壇)に東南の風を祈る」

歌川国安・画 『三国志画伝』

天保一~六年(1860-65)鶴屋吉右衛門ほか

国立国会図書館蔵

『三国志演義』49回に、諸葛亮が道術を使って、季節はずれの東南の風を吹かせるというエピソードがあります。その風によって、赤壁で対峙した圧倒的な曹操軍への火炎攻撃が成功するのです。

歌川国安は、風景全体を黒線で緻密に描き、その合間を吹き抜ける風を白で描きました!これはもはや現代のマンガの表現。葛飾戴斗(二世)は、画面一面に薄墨で風を描き(まるでスクリーントーン)、横に開いて見る本を縦に置き直して見るように、縦長の絵に仕立て上げました。白と黒、グレー、画面の縦横を自在につかって、この場面のミラクルを伝えようとしています。

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「七星壇に孔明風を祈る」

葛飾戴斗(二世)・画 『通俗絵本三国志』

天保七~十二年(1836-42)額田雙額堂ほか

立命館大学図書館蔵

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