多様性に富む蔵書
18.武備志

タイトル:武備志
資料番号: FB.997.8~27
 明・茅元儀(1594 − 1640)著の兵法書,240巻40冊にも及び,膨大な図譜と巻末に「鄭和航海図」が付されていることは言及すべきところ,鵜飼石斎(1615 − 1664)による訓点が施されています。1664年の刊行ですが,底本は明天啓年間(1620年頃)の刊本が使用されています。本書の巻13から巻27は補写,刊記の部分も破損しており,書肆の有無は不明です。しかし,補写部分があるとは言え,本書はヨーロッパでのケンブリッジ大学図書館での所蔵しか確認できません。

FB.997.14_002.jpg


 本書は全40冊の最初のページに「清陰所蔵」の印記が押されています。この印は鍋島茂真(1813 - 1866)の蔵書印であることは判明されています。茂真は佐賀藩の執政,10代目藩主鍋島直正閑叟(かんそう)の庶兄です。清陰(せいいん)は茂真の号,藩主を長きにわたり補佐し,本家の親族同等の待遇が与えられ,絶大な信頼を置かれていました。藩政全般に関わり,鉄砲の鋳造,日本初の反射炉の築造にも成功させました。

FB.997.16_217.jpg

 本書はどのような理由で日本から流出し,中国で蒐集されたかは明らかではありませんが,全巻揃った状態でイギリスに渡ったことは極めて珍しいです。

arrow_upward