3.4.2.客者評判記

編著者:式亭三馬(作) 、 歌川国貞(画)
判型:半紙半裁横本
出版年:文化8年(1811)正月
資料名:花江戸三芝居 客者評判記
資料番号:arcBK04-0033 所蔵:立命館ARC

 役者評判記が広く親しまれるようになると、その形式をパロディ化した出版物も現れた。その一つが、式亭三馬による『客者評判記』である。本書は、当時の八文字屋版役者評判記の体裁や構成にならい、役者ではなく芝居を見に来る「観客」を講評した滑稽本である。巻頭には評判記にならった序文が置かれ、役者の代わりに観客が評価の対象となっている。

 本書には、自分の贔屓の劇場や役者を無条件に称賛する「座贔屓」、役者のしぐさや口調を巧みにまねる「身振好」、特定の役者が出る舞台なら必ず追いかけて観劇する「贔屓之常連」、芝居の最中に眠り込んでしまう「居眠好」など、多様な観客像が描かれている。そこからは、当時の人々がそれぞれの楽しみ方で歌舞伎を愛していた様子をうかがうことができる。

 役者を評価するために生まれた評判記が、今度は観客自身を観察し、論評の対象とした点に本書の面白さがある。舞台の上の役者だけでなく、それを見つめる観客たちもまた歌舞伎文化の担い手であったことを、本資料はユーモラスに伝えている。(宮﨑・戸塚)

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