3.1.1.4.辻番付2

判型:大判/墨摺 1枚
上演:文政3(1820) 5月5日 江戸・中村座 
外題:「義経千本桜」「道行初音旅」

版元:村山源兵衛
資料番号:arcSP02-0193 所蔵:立命館ARC。

 辻番付は、別名「櫓下番付」ともいい、「櫓」、つまり劇場の前に掲げられた絵看板から派生した番付であり、その紙面構成にも看板の意匠が色濃く反映されている。なかでも興行開始時に出される大型の「通し番付」は、劇場正面の景観を一枚の紙面へ移し替えたような構成を持っていた。本作はその典型的な事例である。

 本作では、「義経千本桜」とあるように、右端に大名題惣看板が天地を通して描かれ、その左上部には絵看板に由来する役者たちの絵組が配置されている。また、浄瑠璃部分には、本作で「道行初音旅」と記されているように、浄瑠璃看板と同様の意匠が用いられており、下部には役名や出演者名などの詳細情報である役人替名が続く。さらに、「来ル五日より」などの形で初日の予告が入るのが基本的な形式であった。視覚的なインパクトと情報整理を両立させたこの構成によって、人々はひと目でその興行の内容や座組を把握することができたのである。

 江戸の辻番付の特徴として、興行途中の変更内容を反映する機能が発達していた点も重要である。追加された狂言や演目変更、新たな浄瑠璃外題などが生じた場合には、それを告知するための「追番付」が作成された。こうした情報は他の資料には残らないことも多く、今日では当時の上演実態を知るうえで極めて重要な資料となっている。 また、時代が下るにつれて出演役者や演目数が増加すると、辻番付に掲載される情報量も増大し、紙面はさらに大型化・複雑化していった。一枚の紙では収まりきらず、紙を継ぎ足して横長化したものも現れるなど、辻番付は歌舞伎興行の拡大とともに発展していったのである。(戸塚)

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