3.1.1.5.辻番付3
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判型:大判単色印刷 1枚
上演:大正5年(1916)7月31日 京都・南座
外題:「四ッ谷怪談」
出版:松竹合名社印刷部
資料番号:arcSP02-0734-18 所蔵:立命館ARC。明治時代に入ると、辻番付は歌舞伎興行の近代化とともに、その表現様式を大きく変化させていった。例えば、江戸時代の辻番付では、役名や出演者名などの詳細情報である役人替名は、演目ごとではなく、一座内の力関係に基づいて記載順が決められていた。「書出し」「中軸」「座頭」など、役者の序列を視覚化するルールが徹底されており、番付そのものが劇場内の秩序を示すメディアでもあったのである。しかし明治末頃になると、こうした伝統的な形式は次第に変化し、演目や場面ごとに実際の出演者を記載する、より現代的で実用的な構成へと移行していった。
さらに最大の変化となったのが、印刷技術や写真製版技術の発展によって、従来の絵師による絵組(姿絵)に代わり、役者の実写写真が用いられるようになった点である。本作、大正5年の『四谷怪談』の辻番付を見ると、まさにこうした過渡期の特徴を確認することができる。紙面構成には江戸時代以来の伝統的な辻番付のレイアウトが残されている一方で、上段の場面紹介には役者たちの実写写真が使用されている。役者絵ではなく、生身の役者の姿がポスター上に現れたことは、人々の視覚体験を大きく変える画期的な出来事であっただろう。
このように、写真を取り入れた近代の辻番付は、歌舞伎と観客との距離をより現実的で親密なものへと変化させながら、現代のフルカラー公演チラシやポスターへとつながっていく重要な歴史的段階を示しているのである。(宮﨑・戸塚)
