3.1.1.2.顔見世番付2
-
-
判型:大判/墨摺 1枚
出版:享保18年(1733) 11月1日 江戸・市村座
版元:中島屋伊左衛門
資料番号:arcSP02-0478 所蔵:立命館ARC。この日常の中で、人々が熱狂していた顔見世番付が本作である。大判一枚摺のの形式で、毎年11月に行われる顔見世興行に先立ち、10月中旬から下旬にかけて出された。当時は「新役者附」や「極番付」などとも呼ばれた。江戸の歌舞伎では役者が1年単位で一座と契約を結ぶため、向こう一年間の新たな座組を世間へ披露することが、この番付の重要な役割であった。そこには所属する役者だけでなく、狂言方、囃子方、振付師、芝居小屋名なども記され、一座の構成が序列に従って一覧化されていた。
この番付がメディアとして優れていたのは、劇場正面の看板や意匠を思わせる視覚的なデザインによって、複雑な一座の情報を人々へ瞬時に伝える構造になっていた点にある。紙面は上下二段に区切られ、上段中央には櫓幕形式で座紋や座元名が据えられ、その左右には役者たちの名が二段組で隙間なく書き込まれている。さらに下段には、絵師による一座の「絵組(姿絵)」が配置され、中央に座頭を大きく描くなど、一定の形式が存在した。このように、文字の太さ、大きさ、配置の微妙なバランスから、一座における役者の序列や力関係が視覚的にひと目で理解できる仕組みになっており、人々が演劇界の最新動向を把握するための重要な情報メディアとして機能していた。さらに、こうした番付は、ほんの数日間のうちに一劇場あたり少なくとも一万枚は摺り上げられていたと推定されており、江戸社会における情報伝達力の大きさもうかがえる。(宮﨑・戸塚)
