3.1.1.1.顔見世番付1

編著者:北尾重政(画・筆)
判型:中本1冊
出版年:明和8年(1771) 
資料名:絵本三家栄種
資料番号:arcBK02-0030 所蔵:立命館ARC。

 顔見世興行は、江戸歌舞伎において新たな一年の幕開けを告げる特別な興行であった。顔見世興行とは、文字通りその一年の座組の「顔を見せる」興行である。当時の役者たちは1年単位で契約を結び、毎年11月の顔見世興行で座組を一新していたため、「今年は誰がどの座に出演するのか」は、人々にとって最大の関心事であった。したがって、この顔見世興行を宣伝するチラシ・ポスターとして制作された顔見世番付は、演目の詳細を伝えること以上に、この新しい座組をいち早く世間へ知らせる点に重要な意味があった。

 顔見世番付は、まず芝居茶屋を通じて常連客に配られ、次いで町中の交差点や街頭にも張り出された。人々はそこに記された役者名や配置を熱心に読み解き、贔屓の役者の扱いや序列について議論を交わした。どの役者の名が大きく書かれているか、どこに配置されているかは重要な意味を持ち、番付そのものが町中の話題となっていたのである。このように番付は、単なる宣伝媒体ではなく、人々の会話や熱狂を生み出すコミュニケーションツールとして、日常生活に深く根ざしていた。

 本作は、そうした顔見世番付を待ちわびる江戸の人々の様子を生き生きと描いたものである。届けられた大判の番付を手に入れようと、身を乗り出して紙面へと手を伸ばし、あるいは配布者へ声をかける人々の姿からは、顔見世への期待と高揚感が伝わってくる。(宮﨑・戸塚)

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