型紙を制作するための技法は主に五つあり、それぞれの作業過程で昭和三〇(1955)年に五人が人間国宝の認定を受けました。
・突彫(つきぼり)
伊勢型紙の技法の中でも錐彫と共に最も古い技法の一つで、細い小刀で文様を彫り出す。曲線や鋭角的な切り込みも彫ることができるため、絵画的な図柄の型紙に適している。刃先を常に前に向け突きさすようにして彫り進む。突彫の描く線によって機械では出すことのできない美しさと味わい深い図柄を生み出す。
・錐彫(きりぼり)
突彫と同じく伊勢型紙の技法の中でも最も古い技法の一つ。細い半円形の錐を型紙に垂直に当て、半回転させて円形の孔を作る。彫る文様によって数種類の錐を使い分ける。「小紋三役」と呼ばれる鮫、行儀、通し小紋など非常に細かい文様を彫るのに適している。
・道具彫(どうぐぼり)
「ごっとり」とも呼ばれる。刃先が円、三角、など文様の形をした道具によって一突きで文様を彫り抜く技法。一枚の型紙に何種類もの道具を組み合わせ、整然とした文様を彫り出す。道具彫りに使用する刃物は彫師自ら制作するのが通常だが、親や師匠から受け継ぐことも多い。
・縞彫(しまぼり)
刃を手前に引くことによって彫り込む技法で「引彫」とも呼ばれ、縞文様を彫り出すのに適している。鋼の定規を添えて縞を彫り進め、後に糸入れを行い、文様が切れないよう補強する。一定幅に彫る「きまり筋」では、一寸(約3センチ)に入る筋の本数によって様々な名前が付けられている。
・糸入れ(いといれ)
極細の縞彫や地が白くなる部分の多い型紙の文様を安定させるための補強法。上紙と台紙二枚に剥がされた型紙の間に生糸を挟み入れ、柿渋で手早く貼り合わせる。
大正二(1921)年頃に「紗貼り」の技法が考案されてからは糸入れは特殊な場合のみ行われている。