ツレ

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総合

一曲の中での脇役の一種で、シテ方してかたに所属する演者が担当する。ワキツレに対して、シテツレ(またはシテヅレ)とも呼ぶ。通常のツレのほかに、子方・トモと呼ばれる特別な役も、広義のツレの中に含まれる。

たとえば、敦盛の前シテ草刈男に伴って登場する3、4人の草刈男・大会の後場に登場する帝釈天がツレの例として挙げられる。

シテとワキは、例外を除いたすべての曲に登場するが、ツレは、曲によってはそれに当たる役がないこともある。たとえば天鼓には、前シテ(王伯)・後シテ(天鼓)・ワキ(勅使)が登場するが、ツレに当たる役はない。

また、一曲に二役以上のツレが登場することもある。たとえば草子洗小町では、ツレとして紀貫之・壬生忠岑・河内躬恒・官女(二人)・王(子方)の六人が登場する。

ツレの役割

ワキがシテの相手役で、多くの曲で曲の進行に深く関わる能独自の役割を担うのに対し、ツレは他の演劇にも通じる意味での脇役に近い。

夢幻能(むげんのう)では、ツレは前シテに伴って登場することが多い。たとえば、《敦盛》の数人の草刈男がそれに当たる。曲によっては、シテ一人が登場するのに比べて舞台ににぎやかさ・華やかさを添えたり、シテより軽い役であることを演出上明確にすることで、シテの存在を逆に際立たせるという舞台上の効果も期待されている。

また《大会(だいえ)》の帝釈天(たいしゃくてん)のように、曲によってはシテとは異なるキャラクタを持つ役割を担うこともある。これこそが、他の多くの演劇の脇役に最も近い役割であろう。

前ツレ・後ツレ

夢幻能形式(むげんのうけいしき)脇能(わきのう)では、前場(まえば・ぜんば)後場(のちば・ごば)の両方にツレが登場することがある。たとえば、《竹生島(ちくぶしま)》の前ツレ(まえつれ)蜑女(あま)後ツレ(のちつれ)弁財天がそれにあたる。その場合、前場のツレと後場のツレは、同一の神の類が別の姿で現れたものである。

ツレの語源・歴史

「ツレ」には「連」の漢字を宛てることができ、本来、主要な役に伴って登場する役の意味である。室町時代には現在の「ツレ」の概念はまだなく、脇役を担当する「(わき)為手(して)」が現在のツレにあたる役を演じていた。