B5-2 「義経千本桜」と静御前

「よしつね 三枡源之助」 「しづか 尾上菊五郎」 「忠のぶ 関三十郎」
絵師:歌川豊国 判型:大判錦絵3枚続
上演:文政11年(1828)3月15日 河原崎座(江戸)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcUP0212~0214.

【解説】
「義経千本桜」を題材とした3枚組の役者絵である。元々人形浄瑠璃における作品である「義経千本桜」は、その人気を理由に歌舞伎にも移され上演されている。本作では、佐藤忠信を演じる関三十郎、静御前を演じる尾上菊五郎、源義経を演じる三枡源之助がそれぞれ描かれている。また忠信が牝狐・牡狐の皮を用いて作られた初音の鼓を咥えていることから、この忠信は忠信本人ではなく狐が化けている姿であると考えられる。
「義経千本桜」では、吉野山での静御前と源義経の別れが取り上げられる。館を立ち退き追手から逃げる義経を静が追い、共に逃げると申し出るも義経はそれを許さなかった。義経は、八島の合戦の恩賞として後白河法皇より賜った初音の鼓を自身の形見として静に渡すと、静の身を忠臣佐藤忠信に託しその場を後にする。「義経千本桜」という作品が人気を博していくにつれて、静御前と源義経との別れの物語も人々に親しまれるようになっていった。 (川)