C4-3 月下の顔世御前

「つき百姿」「かほよ 垣間見の月」
絵師:月岡芳年 判型:大判錦絵
出版:明治19年(1886)
所蔵:国立国会図書館 作品番号:寄別2-2-2-3.00-050.

【解説】
 絵師月岡芳年の大判錦絵百枚が綴じられた[月百姿]のなかの一作品である。月を主材に古代から江戸時代までの逸話の人物から風景、戯画など多種多様なものを題材とした作品が描かれている。明治18年から24年にかけての作品が収蔵されており『垣間見の月 かほよ』は明治19年出版であるため初期のものといえる。『前賢故実』の作者として有名な菊池容斎への畏敬の念が込められている。 
 絵師周延の塩冶判官館之図においての顔世よりも胸元がはだけており気品以上に色気を重視していることが分かる。これには芳年が幅広いジャンルを手掛け風俗画美人画での女性の表現の仕方が表れているといえる。また周延の顔世同様、江戸時代出版の美人絵づくしには描かれていた師直を手引きした侍女がおらず師直だけしか作品に記されていない。明治時代には師直や塩冶判官の活躍よりも顔世自体の美しさを重視した作品があるといえる。

(林)

【参考文献】

「浮世絵辞典」

http://www.dh-jac.net/db/nej/results1024.php?f1=ukiyoeD632-30&enter=default

http://www.dh-jac.net/db/nej/results1024.php?f1=UkiD157-05&enter=default

閲覧日12月8日