本作は頼光はじめ6人の武者が童子を取り囲みまさに首を斬り落とした瞬間をとらえ、酒呑童子の首は黒雲とともに舞い上がり、対角線上の頼光を睨む構図となっている。この後童子は頼光の頭に噛みつくが、頼光は兜の下に星甲をかぶっていたため、間一髪で難を逃れることができたと伝えられる。星甲は大江山の道中で遭遇した三人の老翁らから神便鬼毒酒とともに授かった兜で、酒呑童子は神通力を使って人の心を読み取ることができるが、この星甲をかぶることで酒呑童子に心の内を読み取られるのを防ぐことができると伝えられた。まわりの家来たちは兜巾に鎧姿という不自然な出で立ちに見えるが、酒呑童子らに警戒心を抱かせないよう山伏の姿に身をやつし大江山に入った事情を踏まえたものであろう。
浮世絵作品で酒呑童子が紹介される際、国芳及びその門人たちによる一場面を描いた作品が取り上げられる機会が多いが、酒呑童子説話全体の流れを浮世絵で把握する場合、政美の作品は非常に好適であるといえる。(I)
【注】
*中判:約27×19.5cm、間判:約33×23.5cm。本作は大判で約39×27cmのサイズである。浮世絵の判型は時代の移り変わりによってさまざまに変化した。
【参考文献】
『浮世絵大武者絵展 武者絵二百年の歴史をたどる』2003年,町田市立国際版画美術館
≪ 続きを隠す