D3-1 「頼光雲気を察して足柄山に公時を得る」

資料名 :  「頼光雲気を察して足柄山に公時を得る」
作者 : 歌川芳艶〈1〉
員数・装丁・判型 : 大判錦絵三枚続
年代 : 安政5年 (1858) 8月
資料番号 : arcUP7778~7780

 現在、四天王の一人坂田公時(金時)の幼名は、金太郎として知られている。まん丸に肥えた赤い身体に金の字の腹掛けをし、鉞(まさかり)を持った姿が思い浮べられるだろう。この金太郎は、江戸時代には怪童丸と呼ばれていた。古浄瑠璃に描かれた勇者金時から、さらにその子金平を主人公とした金平浄瑠璃の大流行を生んだことも特筆される。近松門左衛門作の「嫗山姥」によって、怪童丸と山姥の物語やイメージは定着したと考えられている。
 山姥に育てられ、熊や猿と遊ぶ姿が、定番の怪童丸の描かれ方であるが、金太郎を抱く山姥を妖艶な美人として描いた歌麿の浮世絵もある。その後、五月人形や童謡「キンタロー」で、桃太郎とともに最も有名な子どもの英勇となった。(A)
 
 歌川芳艶(1822~66)による本作は『前太平記』巻第十六「頼光朝臣上洛事付酒田公時事」に取材したもので、足柄山で怪童丸が頼光に召し抱えられることなり、山姥が山の彼方へ去ってゆく場面を描く。本作以降、芳艶は怪童丸を題材とした絵を連続して描いており、足柄山で碓井貞光と怪童丸が角力をとる「頼光足柄山怪童丸抱図」(安政6年(1859))、足柄山山中で烏天狗、鬼、動物たちと怪童丸が子とろ子とろ遊びをする作品(万延1年(1860))などがある。本作で山姥は仙境の人物らしく描かれているが、他の2作では当世風の美人として表現されている。なお、文久1年(1861)「源頼光足柄山入之図」には滝行をする怪童丸が描かれており、文覚上人*に見立てられた趣向となっている。

arrow_upward