B1-2 『酒呑童子物語』
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資料名 : 『酒呑童子物語』
作者 :
員数・装丁・判型 : 上中下三巻
年代 : 江戸後期ヵ
資料番号 : arcHS03-0018本作は酒呑童子絵巻のなかでも末期に制作された作品であると考えられ、挿絵も素朴でゆるやかな筆致で描かれており、人物描写や所作もどこか通俗的である。本作の詞書は酒呑童子の住処を伊吹山としていることから、『酒伝童子絵巻』(サントリー美術館所蔵、サントリー本)に基づくテキストー伊吹山系統の諸本を参考にしていると考えられるが、冒頭の王朝賛美と、それに影さす人民の失踪事件の部分の説明は省略され、安倍晴明が占う場面から物語が始まる。更に説話の山場とも言うべき酒呑童子の首を討つ場面がカットされ、一方で攫われた人々が解放される場面や、都に帰り家族と再会する場面を長尺で描くなど、型にとらわれない自由な構成となっている。酒呑童子の物語が人々の間に浸透していたからこそ大胆な省略が可能であったといえよう。血統を証明する道具として、または絵画修行の教材として酒呑童子絵巻は利用されてきたが、本作は市井の人々が酒呑童子の物語を純粋に楽しむために生み出されたのであろう。