6.1 役者男柴花 (nakai0530)役者評判記
やくしやなんしのはな 

八文字屋自笑三世著、安永8(1779年)刊、横本3巻3冊 

 『日本古典文学大辞典』の役者評判記の記述は、下記の通りである。(松崎仁記)

貞享年間(1684~1688)に始まり、『野良立役舞台大鏡』以下数次の『役者大鑑類』において、広範な役者の技芸を位付け付して批判する姿勢が形成され、やがて元禄12年八文字屋刊『役者口三味線』以降の数年間の評判記によって定型が確立し、それが永く踏襲されることになる。黒表紙小型横本で、京・江戸・大坂を各一巻とする三都三巻三冊の構成、(中略)本文では立役・敵役・若女形等の役柄別に、技芸や人気による序列に従って配列された役者の芸評を述べ、役者には上上吉・上上・中の上(略)の位付けを付し、評判は合評形式で賞賛・批難をとりませ、公平を期している。

 当文庫の役者評判記は、元文4(1739)年(nakai0496)から元治元(1864)年(nakai0528)まで、38点、112冊である、前述のような京・大坂・江戸が各一冊のものばかりではなく、京大坂・江戸・名古屋、京大坂・京大坂・江戸等、3冊の組み合わせにはいろいろなものがある。書肆について、天保期までは八文字屋八左衛門・河内屋太助であるが、嘉永期以降は八文字屋の名前がみえない。

 役者評判記の翻刻についは、下記の『歌舞伎評判記集成』がある。第1期と第2期は刊行済みであり、第3期は、刊行中である。

第1期 10巻 万治3(1660)年~享保21(1733)、役者評判記研究会、岩波書店、1972~

第2期 10巻 元文2(1737年~明和9(1772)、役者評判記研究会、岩波書店、 1987~

第3期 3巻 安永7(1778)年~安永8(1779)、役者評判記刊行会、和泉書院、 2018~

 なお、本書の『役者男紫花』は、第3期3巻の底本になっている。