E04団十郎の模様

「京の次郎 市川団十郎」
English Commentary
絵師:豊国〈2〉 判型:大判/錦絵2枚続
上演:文政10年(1827)1月13日江戸・市村座
外題:「万代春御摂曽我」
資料番号:arcUY0055,0056 所蔵:立命館ARC.

【解説】
 曽我貧家の場。京の次郎に扮する七代目市川団十郎が、鬼王女房月小夜(岩井)の帯を捕えて、解きにかかっている。団十郎の後ろにある、屏風には「京の次郎 市川団十郎」の札と一緒に、月と重なって飛ぶ蝙蝠の扇面と牡丹の絵が張込まれている。
 牡丹は、二代目市川団十郎の時代、江島生島事件が起きた時に、団十郎は江島から近衛家拝領の杏葉牡丹の紋の付いた衣裳をもらっていたが、奉行所で訊問されたときに、杏葉牡丹は、市川家の替紋であると言逃れて以来、使うようになった。杏葉牡丹は、助六の帯の文様などに使われている。
 蝙蝠の由来は、牡丹から来ている。牡丹は福牡丹ともいうが、福と蝠の字が通うこと、中国では富貴の象徴とされ吉祥模様であるところから、特に七代目団十郎から好んで用いている。
 団十郎の足もとには、煙草入れが置かれているが、そこには三筋の模様が描かれている。これは、団十郎の定紋の「三升」の一部を切取ったものである。(岡.)