H08戸板返し(四谷怪談)

『御狂言楽屋本説』二編
作者:三亭春馬 絵師:国綱 判型:中本 
出版年:安政6年(1859)江戸
資料番号:shiBK03-0192 所蔵:白樺文庫.

【解説】
 二編四冊ある幕内紹介本。通常観客の目に触れない舞台や道具の仕掛けを図解したもの。初編上・下では、せり上げなどの舞台構造、雨や雪を降らせる方法、大道具・小道具に施された仕掛けを図解し、図中に解説を加える。また囃子鳴物・糊紅鉄砲の製法についても述べる。二編より具体的に幽霊・首・宙乗りをとりあげ、「妹背山」の道具流し、「千本桜」の狐忠信、「葛葉」の早変り、お岩の髪梳き、「児雷也」の仕掛け物など周知の演目の仕掛けを明かす。
 本図の画中には、
  同じく土手場・土手の草はしゅろの葉を用いゆ。ただし、こまかにさくべし。
  同じく戸板がへし これは両面ともこしらへ物の身体を附け置き、首の出るほどに穴を開け、そこより首を抜きさして、
  お岩小平の早替わりをなすべし。
  (真ん中の鑑を持った人物の左側)この穴は草にてかくす。(首を出す穴)
とある。左の戸板に貼り付けられているのは、首の部分のみを開けてある人形である。この穴からお岩と小平が首を出し、早替わりに使ってみせた。土手の裏側では、お岩が化粧をしてる様子。薬によって顔が崩れたお岩を演じるため、顔にただれたような化粧を施してる最中。戸板の顔を出す部分の上には菰が被せられており、これによって穴を隠す仕組みになっている。衣裳(体の部分)は戸板にくっついているので、伊右衛門が菰を取るとお小平が現れ、戸板がひっくり返ると今度はお岩が現れる。(坂.)
【用語解説】
東海道四谷怪談