G09替わり絵 「新工夫四ツ谷怪談丁ちんぬけ」 English Commentary 絵師:無款 判型:細判/錦絵 出版:明治初年(1868)頃大阪 資料番号:shiUY0162 所蔵:白樺文庫. 【解説】 一枚の絵の中に別のパーツを貼ったり、差込んだりして変化を可能にする方法をとった絵を「折返し絵」「子持絵」などと言う。子持絵は、紙面に別摺りした紙が貼って、その紙をめくるとその部分だけ絵が変わるという仕掛である。早替わりや舞台の演出によって変わる役者の動きを再現しようとした工夫であり、楽しめる。既に子持絵の部分が貼り付けられて売られていたものもあるが、未完成のまま販売し、購入者が自身が製作を楽しめるものもあった。 本作品は、「東海道四谷怪談」を題材にしたものである。「四谷怪談」は、「戸板返し」をはじめとする様々な恐怖を煽る演出が魅力の一つと言ってよいが、この作品では、幽霊となったお岩が提灯から現れる「提灯抜け」を取上げている。 上部の絵の「切ぬき」と書かれている2つの部分を切りぬき、下の円と重ね円盤を回すことででその切りぬき穴から幽霊のお岩と火玉が現れるという仕掛けとなっている。また場面に合わせ、提灯を破れる前の状態に戻すことや伊右衛門のポーズを変えることができ、この1枚の錦絵ひとつで、見事に「提灯抜け」の場面を再現することできるようになっている。(藤.) 【用語解説】 戸板返し 東海道四谷怪談 続きを読む ≫ 折返し芝居と呼ばれるものもある。舞台面が蛇腹のようになっており、折り返すことによって演目や場面が変わっていく現在でいう紙芝居に近いものである。古いものでは享保年間(1716-36)から存在し、初期のものは単純だが次第に複雑化していき一枚の絵から何十通りという変化が見られるものも作られるようになった。 【参考文献】 『岩波講座 歌舞伎・文楽〈第4巻〉歌舞伎文化の諸相』(岩波書店) 『歌舞伎』(立風書房) 『新版 歌舞伎辞典』(平凡社) ≪ 続きを隠す 投稿日:2015年11月16日 by 8P カテゴリ: G 観客の楽しみ [編集]