G11着せ替え絵、鬘付

「歌舞伎役者鬘付け」
English Commentary
判型:大判錦絵を切抜き
出版:明治7年(1874)頃東京
資料番号:Ebi1459 所蔵:Ebiコレクション.
【解説】
 歌舞伎の衣装はきらびやかで魅力のひとつであり、また衣装を使った演出などにも、「ぶっ返り」「引き抜き」「差し込み」「袖落ち」などの種類があり、人々の目を楽しませてくれる。文化文政期の「早替わり」や「変化舞踊」など一人の役者が複数の役柄や役をこなす演出が大流行したが、これを紙上で再現するものとして、着替え絵が世に出されたものと考えられる。特に三代目中村歌右衛門は、上方歌舞伎を代表する役者で、立役だけでなく敵役、女役までをこなしたため「兼ル役者」と呼ばれているが、この「兼ル役者」を受入れる発想も、着替え遊びと通底しているだろう。
 本作品は、鬘だけを付替える「鬘付」という玩具絵で、切り抜いた数種類の鬘を役者の頭に当てて遊ぶ。江戸時代の髪型は年齢や職業、身分によって決まりがあり、歌舞伎の鬘もその当時の典型に合わせて使い分けていた。本作では、二人の役者に、それぞれ6種類の鬘を替えることできる。
 こうした玩具絵に選ばれる役者は、功成り名を遂げた実力者よりも、人気の花形の役者が選ばれる。河原崎三升は後に九代目市川団十郎となる人。もう一人の沢村訥升も、沢村家の長男で、弟の沢村田之助とともに人気を博した。
 河原崎三升の手ぬぐいを巻いた鬘は、「与話情浮名横櫛」の与三郎のものであるが、河原崎を名乗りながら、市川家の紋である三升紋がついてある。すぐに市川団十郎を襲名することが約束されていたことを誰もが認めていたという証拠となろう。(藤.)

【用語解説】
 与話情浮名横櫛