G12組上げ絵

「白浪五人男鎌倉極楽寺山門之場組上ゲ五枚続」
絵師:未詳 判型:大判/錦絵5枚
出版:明治35年(1902)5月15日東京
資料番号:arcUP5617〜5621 所蔵:立命館ARC.
【解説】
 「切組み燈籠」、上方では「立版古」とも呼ばれていた。厚紙を裏打ちして切り抜き、立体的に組み立てる遊びである。組み上げ絵の種類は様々で名所や歴史の一場面を描いたものもあったが、歌舞伎は舞台のセットがあるため模型的で想像がしやすかった。現在最古の作品には明和(1764-72)頃と推定される鳥居清経筆「仮名手本忠臣蔵九段目」がある。
 明治27年(1894)頃から東京では大流行し、明治座、歌舞伎座、東京座の新狂言に対して組上げ絵が続々と出版された。大判で三枚から五枚でできているものが一般的だった。半畳ほどの大きさの大掛かりなものもあり、構造が複雑である。したがって、組み立て絵は子供だけの遊びではなく大人が子供のために作り、その過程を楽しむ遊びとも言える。
 上方では、幕末から明治時代にかけて長谷川貞信父子による作品が多数出版される。上方の玩具絵は小さいものが多く、組上げ絵も一枚から三枚続ほどのものが一般的で比較的小規模であった。
 本作、『白浪五人男』は河竹黙阿弥の作品で、文久2年(1862)年3月江戸・市村座で初演された。現在では三幕目の「浜松屋」以下が上演される。美貌を種に女装をし数々の悪事をしていた弁天小僧は大盗賊駄右衛門の手下となり、「白浪五人男」と謳われていた。女装をし「浜松屋」に訪れ番頭にゆすりをかけていた弁天小僧の正体を先に入込んでいた駄右衛門がわざと見破る場面は、弁天小僧を知る人なら一番に思い浮かぶ場面だろう。
 この組上げ絵では、大詰に五人男が稲瀬川に勢揃いし捕手を逃れ落ちていき、弁天小僧は極楽寺の大屋根の上で立腹切って死に、駄右衛門は捕らえられる場面である。
 組み上げる際、完成図は曖昧で、説明書があるわけではないので、絵のなかに書き込まれている記号と文字を頼りに組み立てていく。組み上げ絵は、ただ立体になっているわけではなく遠近法が取入れられているため、奥に行くほど部品が小さくなっており、正面から覗きあげるように見たときに舞台の壮大さが感じられるようになっている。
 今回制作した組み上げ絵は厚紙を用いておりある程度の強度があるが、本来は錦絵、和紙に描かれているため、組み上げるのは至難の技ではないだろうか。(藤.)